生物多様性とは、すべての生きものの間に違いがあることであり、これらの生きもののつながりが、生態系を構成しています。
生物多様性には、森林、里地里山、河川、湿原、干潟、サンゴ礁などいろいろなタイプの生態系があることを示す「生態系の多様性」、動植物から細菌などの微生物にいたるまで、いろいろな生きものがいることを示す「種の多様性」、同じ種でも異なる遺伝子を持つことにより、形や模様、生態などに多様な個性を持つことを示す「遺伝子の多様性」の3つのレベルの多様性があります。
しかし今、その生物多様性が様々な危機に瀕しており、かつて身近にいた生きものでも、絶滅のおそれがあるものも数多くなっています。
ここでは生物多様性の4つの危機とその要因を解説します。
森林を伐採して住宅を建てたり、海岸を埋め立てたりするなどの開発行為に伴う生息・生育地の減少、観賞や販売目的のめずらしい生きものの乱獲により、生きものの数が減少しています。
かつての日本では、農耕や生活のため、山から薪を切ったり、落ち葉を集めて肥料にするなど、地域の自然を有効に利用しており、そこにはその環境や使われ方に応じた生きものが生息・生育していました。しかし、薪や落ち葉が燃料やたい肥として利用されなくなり、雑木林や採草地に人の手が入らなくなってしまったことで、そこを住処としていた生きものの生息・生育に影響を与えています。また、米を作らなくなり、田んぼに水をはるのをやめてしまったことで、こうした水辺や湿地に生息・生育していた生きものが減る等の影響が出ています。
人の手によって持ち込まれた外来種は、日本にもともといた生きもの(在来種)を食べたり、生息場所を奪ったりする等の影響を与えているほか、在来種と交雑して遺伝的なかく乱をもたらすなどの影響を与えています。例えば、セイタカアワダチソウが繁茂して在来の植物が生育できなくなったり、増殖力の高いウシガエルの捕食により、在来の動物が減ったりしています。
地球温暖化に伴う気候変化により、生きものの分布域や、植物の開花・結実の時期に変化が起きています。また、変化の速度は種によって異なるため、昆虫と植物の送受粉のタイミングなどの生物間の相互関係に狂いが生じ、生きものの生息・生育に影響を与える可能性があります。 例えば、寒さに弱いクマゼミは、もともと関東南部までの地域で見られるセミでしたが、近年の気温の上昇に伴って徐々に北上し、現在は、関東北部から北陸まで広い地域で見られるようになりました。
上記のような影響を受け、東京においても多くの動植物種に絶滅のおそれがあります。
東京都では、自然環境の現況を把握し、生物多様性や希少な野生生物種の保全等に役立てるものとして、「東京都の保護上重要な野生生物種~東京都レッドリスト~」及び「レッドデータブック東京」を作成し、公表しています。
「東京都の保護上重要な野生生物種~東京都レッドリスト~」とは都内で絶滅の危機に瀕している野生動植物について、分類群ごと、種ごとに絶滅危惧のランクを示したものです。
本土部(2010年版)と島しょ部(2011年版)の2分冊になっており、環境局HPにてダウンロードが可能です。
「レッドデータブック東京」とは、東京の希少な動植物のリストである「東京都の保護上重要な野生生物種~東京都レッドリスト~」掲載種について、写真と解説文を記したものです。
東京では目にする機会が少なくなった動植物を写真で確認することができます。また、「生育環境・生息環境」「生存に対する脅威や保全上の留意点」等、希少種保全に役立つ情報も掲載しています。こちらも本土部(2013年版)と島しょ部(2014年版)に分かれています。rdb